音が 泉のように湧き出していた あの時間のあと
ふと 出会った もうひとつの道──
音楽療法と アート・セラピー
私は 3年生になって
新しい問いに 静かに 向き合いはじめました
──
音楽療法の授業の一環で
精神科病棟で演奏する機会がありました
私は ただ オーボエで演奏しただけ
それでも
私が演奏しているときにだけ
涙を流す方がいたり
静かに目を閉じて聴いていた方がいたり
とても 不思議な体験をしました
──
アート・セラピーのゼミで
“五感を癒す空間づくり”を考えて発表したとき
なぜそれを思いついたのかは
正直 よく覚えていません
ただ
その空間を形にしていく時間は
湧き上がるような喜びと
なんともいえない高揚感に満ちていて
今でもその感覚を
ありありと思い出すことができます
──これを 一生やっていきたい──
そう 心から思いました

けれど
その空間の中で
癒しの音楽を奏でたいと思っているのに
どんな音楽を奏でたらいいのか
それだけが どうしてもわからなかったのです
──
そうして
違和感を 胸の奥に押し込めながら
「クラシックでいくしかない」
という思いと
「本当の癒しって なんだろう」
という問いが
心の奥で ふくらんでいきました
──
そして私は
その問いを胸に
癒しを探す旅へと 静かに歩き出したのです
そしてその旅は いつしか
私自身の“本当の泉”と
向き合う時間へと つながっていったのでした
