ある日 突然──
音もなく ひとつの扉が 開いた
JAZZという名の 見えない世界へ
まだ何も知らなかったのに
気づけば 音に 呑みこまれていました
そのまま 夢のような世界に 連れ去られるように──
JAZZのステージは
まるで 長い夢の続きを見ているような
不思議な感覚でした
けれど
夢のようなことばかりではありませんでした
音のまわりには いつも
言葉にならない ざわめきがありました
音を出せば出すほど
心の奥が かき乱されていくようで──
JAZZって 何?
ふれるたびに 心が ざわついて
それでも その先にある
“本当のJAZZ”に 出会いたくて──
──
そんなある日
小中学校の先輩と 偶然再会しました
「これがJAZZだと思っているでしょ?
生音のJAZZもあるから
俺のライブ 聴きにおいで」
そう言われて 足を運んだライブで
先輩と共演していた もう一人の音の人──
憧れのミュージシャンの方と 出会ったのです
私は アルトサックスの音が 苦手でした
けれど その方の音だけは
なぜか すっと 身体に入ってきました
きっと 音だけじゃなかったのだと思います
その方のまとう空気が やさしくて やわらかくて
ライブのたびに その空気にふれたくて
私は 話しかけていました

その頃の私は
音のないところで
たくさんの責任と向き合っていました
ココロも
カラダも
時間も
まるで 自分のものなのに
自分のものではないように 感じていて
日々の中で
なにかが少しずつ
摩耗していくような感覚
──
泉が枯れていたとき──
生きていていいのかな?
そんなふうに
思っていたことも ありました
でも そのとき ふと 気づいたのです
死にたくても 死ねない
なのに
生きたくても 生きられない人もいる
それは きっと
なにかに 生かされているということ
私が 生きていることに
意味があるのかもしれない
──その中で 問いが生まれました
──私は なぜ 生きているの?
──私の命は なんのためにあるの?
そんなときに
ふと ひとつの言葉が 浮かびました
“湧き出てくる音楽で、世界中をHAPPYに”
これが 私の使命なんだ──
けれど
“世界”という言葉が あまりに大きくて
ただ その音にふれるたびに
胸の奥が わずかに震えていました
