ここしばらく
毎日が ばたばたしていて
ゆっくりすることが できなかった
練習も
まともにできなかったし
眠る時間も ぜんぜん足りていなかった
ようやく
少しだけ
呼吸ができる朝が
やってきた気がした
音楽はかけずに
朝の音を聴いてみた
顔を洗うときの
水が 流れる音
タオルで 顔をふく音
手のひらでつける 化粧水の音
瓶を そっと置く音
冷蔵庫を 開ける音
また 閉める音
蓋を 開ける音
カップに 糀水を そそぐ音
そして 蓋を 閉める音
その 静けさの外で
誰かが 歩く音
車に乗る音
エンジンがかかる音
車が 遠ざかっていく音
誰かの音と
私の音が
重なっていた
YOGAをしているときも
音楽はかけなかった
呼吸の音
マットに触れる音
そのすべてが
耳にやさしく響いていた
そしてまた
朝の静けさの中へ──
──
ケースを開ける チャックの音
グリスの蓋を そっと開ける音
管をつなぐ 小さな音
水を注ぐ 音

リードの 音
メトロノームの 音
それに合わせて踏む 足音
そして 私の オーボエの音
やわらかな朝の光の中
静かに 音が 重なっていく
“今日も はじまる”
そんな合図みたいに
音がひとつずつ 私を整えてくれる──
──
最近は
自分のまわりの音に
耳を傾けることさえ 忘れていた
音楽が湧き出てこない日があっても
音の中に 私は生きている
いつも たくさんの音に囲まれているのに
私は その音たちを 聴いていなかった
今日は これから
どんな音たちに 出会えるだろう
静かに耳をすませながら
また ひとつずつ
音とともに はじまっていく
