そんなある日
ふとした流れで
JAZZのワークショップに 参加しました
教えてくれた先生は
今まで聴いたことのない
不思議で 美しい音を奏でる
JAZZピアニストの方でした
先生がコードを弾いてくれて
「何が見えたか書いてみて」と言われたとき
私には この世のものとは思えないほど
美しい景色が 見えていました
そして
先生の言葉が 私の中に 響きました
──初めて音楽をやりたいと思った時の気持ちを
大切にするんだよ──
その瞬間
私は 思い出していました
「私も 音で自由に遊べるようになりたい」──
そう願った あの日のことを
──
そしてそのワークショップで
私は 人生で初めて
アドリブをすることになりました
発表会直前まで
ルートの音を ロングトーンするしかできなかった私が
ふと 作曲を学んでいた頃の
あの感覚を そっと胸の奥から 引き出してきて──
音を 体に入れて
オーボエを 手にして
音が出てくるのを ただ 待ちました
こちらから出そうとしなくても
選ぼうとしなくても
まるで
忘れていた泉が ふと目を覚まし
音となって あらわれてくれたような
そんな 一瞬でした
演奏が終わったあと
先生から
「あなたの純粋さが
あなたを どこへ連れていくのでしょう」
とコメントをいただきました
──純粋って、なに?
その言葉は
胸の奥に 静かに 残りました

その体験のあと──
ワークショップで教えていただいた
耳には聴こえない アフリカのリズムを
体の奥で 感じとれるようになっていきました
音楽を聴いていると
首が 勝手に 揺れはじめる
その感覚が 私は 大好きで
それを感じたくて ライブに通っていた時期もありました
──
それから私は
JAZZという音楽が
“純粋な私”でなければ
やらせてもらえない音楽だと 感じるようになりました
──神さまみたいな音楽──
それはつまり
自分をごまかせない
ということでもありました
──
けれど私は まだ
目の前の音楽と
自分の本当にやりたい音楽とのあいだに
どこか
ズレを感じていました
オーボエを吹く怖さを
まだ克服できずに
気づけばまた
音楽の扉を そっと閉じて
音は 出なくなっていました
──
それでも
消えなかったものがありました
心のいちばん奥の
泉の底から かすかに聞こえてくる
あの音だけは──
私はまた
気づけば 枯れていた泉のそばに
静かに 腰を下ろしていました
